―キロクルを導入された経緯について教えていただけますでしょうか。
山原様:
もともとQSCチェック業務用のシステムとしてすでに別のものを使っていたんですね。そのシステムを使ってどうやってうまく業務運用していこうかということはずっと考えていたのですが、ただ、使うシステム自体を変えるつもりは特にありませんでした。
しかし、店頭の現場スタッフからは「ここが使いづらい」「ここが分かりづらい」といった声が届いており、どうやって改善していこうかを悩んでいたところでもありました。
ちょうどそのぐらいのタイミングで、SSTさんからお声がけ・・・お電話で営業アプローチいただきました。電話営業をいただくケースですと、実際にお話を聞くまでは行かないことがほとんどなのですが、妙にこう、積極的な感じが私に刺さりましてですね(笑)、一度じゃあお会いしましょうかということになりました。
そうしましたら、ファーストコンタクトでのプレゼンがすごく良くて、本当に便利そうだな・・・!と感じまして、もっとお話を聞きたいので次回の打ち合わせセットしましょう、とこちらからもお願いをして、そこからはとんとん拍子で導入に至りました。
―御社では、QSCチェック業務自体は馴染みのあるものだったのでしょうか?
山原様:
はい、QSCチェック自体は創業時からずっと重要視しています。
はじめは完全に紙ベースでした。デジタル化したのは2017年前後だったと思います。
そして、2022年に販売管理システムという基幹システムのリプレースがありまして、その際に色々見直しがあってQSCについてもリプレースした基幹システムのほうに集約できないかという話があって、一度集約したんですよ。QSCツール利用をやめて、基幹システム1本にしたわけです。
ただ、今になって思えばその集約の仕方に少し無理なところがあり、結局使い勝手があまり良くない・・・しかしなんとか運用していかなくては・・というタイミングで、キロクルのお話をいただいたという流れです。
つまり2017年から2022年まで専用ツールでQSCチェックを行っていて、2022年に一度基幹システムのみでの運用になり、今はキロクルが専用ツールとして再び選ばれたということになります。一度集約したのをまた分けているので、ちょっと逆戻りしている状況です。
圧倒的だった、キロクルの使いやすさ
―なるほど、ある意味では「そうさせるほどキロクルを気に入っていただいた」ということかと思いますが(笑)、そこまでキロクルが御社に「刺さった」ポイントというのはどんなところだったのでしょうか?
山原様:
プレゼンいただいた内容を鮮明に覚えているんですが、とにかく「現場で使いやすそう」。
いくら本部側が楽であろうが、現場で使いやすくなければ意味がないので。プレゼンいただいた内容も完全にその点に特化していました。
システム関連の浸透は苦労するんですよ。ここ数年でいくつか各種システムの導入をしていますが、やはり浸透するまでには普通1年・・2年はかかります。2年経ったとしてもまだ使い方を知らない方もいます。人員の入れ替わりがあったりもするので、引き継ぎがうまくできてないという要因も考えられますしなんとも言えませんが、でも、結局はそのシステム自体にも分かりにくいというところがあるんだろうなと思うんですね。
いっぽうキロクルは導入してまだ数ヶ月ですが、すでに現場できちんと使えてると言っていいと思います。もっと使い勝手を全うしていくことはできるとは思うのですが、以前使っていたシステムでやっていた水準にはすでに達しています。それくらい使いやすいです。
SSTさんとは月次の定例会を開催しているんですが、定例でお話しする内容というのも、キロクルの浸透についての相談とか、機能についての質問といったものは全くなくて、新たな機能に関しての要望・・文句に聞こえているかもしれませんけど(笑)、将来への期待の表れということで「こんなことができたらさらにいいのに!」というお話をさせていただいています。
エリアマネージャーは「指摘屋」で終わってはいけない
―今、ワタミグループの中ではキロクルをどのくらい使っていただいてるのでしょうか?ブランドごとや、営業形態ごとに利用の有無が違っていたりしますか?
榎本様:
直営店やフランチャイズなどの運営形態によって使用頻度は少し変わりますが、使っているかどうかで言えば、全店舗、317店(2024年10月時点)で使っています。エリアマネージャーが、1人当たり5店舗〜最大30店舗くらい見ています。
私は今だいたい20店舗強を担当しているんですが、アナログな作業がキロクルによってなくなったことは大きいですね。
例えば以前までは現場の写真を撮ってもシステムには反映されなかったので、システム上の管理とは別に、撮った写真を個人のSNSメッセンジャーなどで店長たちと共有する・・といったことをしていたのですが、これが必要なくなりました。QSCチェック関連の作業時間が私の場合は1/3くらいになりました。生産性が向上したことで担当店舗の多さをカバーできた面があります。
エリアマネージャーという職種では、1人当たりの担当店舗数は7つ、8つあたりが限界と言われています。店舗数の限界というのは、それ以上になってくると「問題点の指摘屋」で終わってしまうということなんです。つまり問題点の刈り取り、改善/是正までができない。我々はそれ以上の店舗を回しているのでキャパオーバーの水準に入ってしまっているわけですが、そこを組織的にどうにか是正をかけていっている、という状況です。
―キロクル導入によって改善したことというのは記録作業が早くなった、記録のまとめ作業が不要になった、ということを挙げていただきましたが、他にはありますか?
榎本様:
キロクルの導入効果といえばとにかくスピードというのが私の感想なのですが、他で言うと・・これもやはりスピードにも関連することなんですが、改善指示の機能です。チェック項目と、その写真と、改善についての指摘事項がひとまとまりで見られる、共有できる。ビジュアルで見るのがやはり一番いいと思うので、ビジュアルと項目で改善指摘。この指摘事項が3つ一緒に見られるのは話が早いです。
キロクル導入で、人材育成を追求するための時間が生まれた
―QSCにまつわる作業時間が3分の1になったとお話しいただきましたが、そこで浮いた時間というのは、どう活用されているのでしょうか?
榎本様:
もともと店舗当たり90分くらいかかっていたものが1/3になるので、1時間余裕ができます。
30店舗分であれば、30時間分が他のことに使えるようになります。営業日でいえば3〜4日分です。
私がよく行うのは、例えばレジ接客が苦手な店長がいたとしたら、店長をそのレジ接客業務に充て、そして、普段店長が主に入ってるような業務ラインに私が入る、という手法です。苦手な項目にしっかり向き合ってもらってレベルアップを図るわけです。そういったフォーメーションを取るために人員を増やすということが現実的ではない中、私が応援に入ることでやりくりが可能になるわけです。スタッフに「いつもと違う時間の使い方」をさせるんです。もちろん接客だけでなく、書類仕事や清掃でも同じことができます。店舗のマネジメントというのは究極的には人材育成ですから、画一的な作業にかける時間が減り、その分きめ細やかな取り組みを充実させられるというのは大きいです。
QSCは、手を抜いたらすぐに崩れる「砂の城」。だからこそ優れたツールが必要
―店舗の命題としての「売上向上」にとって、ワタミさんではQSCチェック業務どのように位置付けていらっしゃるのでしょうか。
山原様:
QSC管理というのは「砂の城」、というのが私たちの合言葉になっているんです。
つまり、わずかでも気を抜いたらすぐに崩れていく、ということです。売り上げを向上させるためには、継続的にお客様にリピートしていただく必要があります。QSCの品質維持向上はそこに不可欠であるということなので、これは「日々磨き続ける」ものだという認識です。キロクルが担っているのはこの「磨き続ける」作業をどれだけ効率的に、効果的にするかという部分です。「磨きやすさ」を求めているわけです。それで言うと、これまでのシステムにはなかったキロクルの改善指示/報告機能をいかに実践的に使っていくか、というところがさらなる売り上げ向上につながる。そのように取り組んでいます。
エリアマネージャーという仕事は、本当に意識の高い方々にしかできないのではないかと思います。体力的な負荷もかかりますし、相当なコミュニケーション力が必要です。たとえば10店舗を担当するなら店長10人と、店長の他に、部下の社員が何十名といます。この人員を、ひとりひとりのコミュニケーションスタイルの違いを乗り越えて束ねて同じ方向にこう持っていくというのは、ものすごく力が必要になります。
ですので、店舗へ行って問題点の指摘をするにしても、先ほど言ったような「指摘屋」で終わってしまうのか、改善まで持っていけるのかというのは、もう本当にエリアマネージャーのポテンシャルにかなり委ねられているところがあります。
―さらにキロクルに進化してほしいポイントはありますでしょうか?
榎本様:
すでに現場からは十分に好評をいただく状況にはなっているんですが、そうですね・・・
たとえば5項目ぐらい、エリアマネージャーが各自自由に書き込める、空白のチェック項目があれば・・時節的なもの、たとえば、夏から秋に向かう時に、夏の間は使われていなかった上着用のハンガーをまとめてきれいにしてください、とか、特定のエリアでは何かのキャンペーンが1ヶ月間走りますからこの点に注意してください、とか、ブランドごとに統一したチェックシートには書ききれないような内容を、エリアマネージャーが独自に追加できたらいいですね。
山原様:
そうしたメッセージを、別の連絡経路で流してもダメなんですよ。QSCにまつわることなので、キロクルの中で発信・評価できるほうがいい。エリアマネージャーごとの色を出したいということでもあります。
QSCチェックを紙で行っていた時代も、できる人はチェックシートの余白のところに重要なことを書くという傾向があります。
あらかじめ決められたチェック項目以外のところで「気づき」が生まれているんです。
チェック実施者の視点で、追加ボタンじゃないですけど、プラスボタンを押すと、加点項目にはならないけれどチェック項目が追加できる。その都度思いついた指摘項目みたいなものを、担当店舗に課して、そこに対して改善指示/報告を回せていける。そんなことができると、お店の「磨き上げ」にはすごく繋がりそうです。
地域ごとでやっぱり店舗の色が違ったりしますからね。ここはお子様の多い立地なんだよねとか。
ここはピーク帯が他とは全然違う時間帯になるから、通常のチェックポイント以外にも重要なポイントがあるんだよね、といったところはカバーできたらいいですね。
さらに、それを社内で横展開していけたら・・このエリアマネージャーはこんなことチェックしてるよ、というのをこっちで吸い上げて、みんなに見せていく。あの人が調子がいいのはこういうことだったんだ!というのがわかる。
―デジタルツールを使うというと、その「画一性」のほうに利便を感じるイメージが強いですが、エリアマネージャーの個性を引き出すというのも重要なわけですね。
榎本様:
そうですね。基本的にはよく言われる「262の法則」のように、スキルレベルが1番下の層に目線を合わせて全体の底上げをしていくのですが、その段階をすでにクリアしている店長やスタッフをさらにレベルアップさせ、役職が付くくらいに持って行きたいという時は、新たな負荷をかける、ではないですが、基本的なレベルを超えた視座や視点を持ってもらう必要があります。
そうした中で生まれた気づきは、その個人だけでなく会社全体のレベルを上げるものだったりもするわけです。
山原様:
ここまでの話ではアナログな作業をどんどんデジタルにしているということなんですが、個々人の作業を見ていると、やはり紙にメモを取るというのが全くなくなったわけではありません。「気づき」があった時に、すぐにメモしたいですからね。
榎本様:
あとは、社員さんがすごく若い場合など、仕事のやり方を口頭でうまく伝えられない場合があるので、例えば、チェック項目を満たす基準となる写真をはじめから表示できるようになるといいですね。実際の様子を撮影したものと、お手本を比較して何がダメなのかを指導するのにも使えます。
QSC向上は、売上向上にそのまま比例する
―これまで現場目線でのキロクルについて、期待値も含めてお話いただきましたが、
最後に、会社/経営目線での寄与度はいかがでしょうか?キロクルは売上向上に寄与しますか?
山原様:
はい、「使い倒せば」上がります。ただ使っているだけではダメですね。「指摘屋」で終わってはいけないということです。きちんと改善まで持っていけるような使い方ができれば、リピートされるお客様は自ずと増えていき、結果売上は向上すると考えています。
榎本様:
基本的には一度入店したら1個2個は必ず何かを改善して店を出るというのが、エリアマネージャー業の本質だと考えています。それを指摘屋として「やっといてね!」というのは、「言った」だけで、伝わってはいないし、改善もしない。結果として毎月同じ指摘を繰り返して停滞することになります。
そこをしっかり押さえて店が良くなれば当然売上は上がります。QSCチェックのポイント数と売上は完全に比例すると思います。
今後もキロクルを活用したQSCの品質向上活動を継続し、店長・スタッフのレベルを引き上げ、お客様に喜ばれる店舗作りが行えることで、売上向上につなげていけると考えています。